M.2 SSDで見かける「NVMe」とは? SSD選びに役立つ用語の基礎知識

SSD製品を探している際に「NVMe」や「M.2」という単語を見かけることが増えてきました。ぼんやりとしたイメージはつかめているものの、具体的にNVMeとは何かを理解できている方は、意外に少ないかもしれません。ここでは、NVMeの概要に加えて、NVMeと関連が深いM.2やPCIeといった言葉の意味、SATAとの違いについてご紹介します。SSD選びに役立つ内容なので、ぜひご確認ください。
※この記事は2024/8/30に再編集しました。
目次
NVMeとは
NVMe(エヌブイエムイー)は「Non-Volatile Memory Express」の略で、SSDをはじめ、不揮発性メモリを使用したフラッシュストレージのために最適化された通信プロトコル(異なるデバイスが通信する際の手順やルール)を指します。
従来使われていた通信プロトコルの「AHCI」は、SATA(サタ)接続のHDDに最適化されたもので、SSDのデータ処理性能を完全に生かすことができませんでした。そこで、フラッシュストレージの通信最適化を目的に作られたのがNVMeという規格です。従来の通信プロトコルと比較して「4KBのデータを転送する際、従来は2つ必要であったメッセージが1つだけで済む」「コマンド処理のためのキューが従来の1個から65,536個へ大幅に増えている」といった改良が行われています。
コマンド処理のキューが増えているため、ディスクI/O(データの読み書き操作)を多数同時処理するサーバーなどに用いた場合は、大幅な処理の高速化が見込めます。
より簡潔にいうと、データの読み書き速度が従来のAHCI(SATA)よりも非常に速いのがNVMeです。
サーバー以外でも、高速なデータ処理が求められる人工知能(AI)や、機械学習用のストレージ、市販のSSDなどにおいても、NVMeが活用される機会が多くなっています。
NVMeと関連が深いPCIeやAHCIの意味
SSD製品について調べていると、NVMeとともに「PCIe」や「AHCI」などの用語も同時に目にする機会が多いはずです。ここでは、NVMeに関連する用語についてご紹介します。これらの規格の名称についてある程度知っておくことで、SSDを選ぶ際もその知識が役に立つでしょう。
PCIeは接続規格
PCIeは拡張バスや拡張スロットの接続規格を指す名称です。「Peripheral Component Interconnect-Express」を略した呼び名で、SSDに限らずメモリの接続方式としても普及しています。NVMeを通信プロトコルとして採用しているM.2 SSDの接続規格はPCIeです。「PCIe3.0×NVMe接続のM.2 SSD」などのように紹介されているので、データ処理速度にこだわりたい方は確認してみてください。
AHCIは通信プロトコル
AHCIとは「Advanced Host Controller Interface」の略称で、SATA接続のHDDに最適化された通信プロトコルです。前述のように、NVMeはコマンド処理のためのキューを65,536個持ちますが、AHCIはキューが1つしかないなど、NVMeと比較すると性能は劣ります。
また、AHCIはあくまでSATA接続に最適化された通信プロトコルです。SATA接続のSSDも見られますが、SSDをはじめとしたフラッシュストレージのデータ処理速度を向上させる役割は持っていません。
NVMeを採用しているSSDの種類と特長
NVMeを採用したSSDは、形状からいくつかの種類に分けることができます。NVMe採用のSSDの種類と、それぞれの特長をご紹介します。
M.2
M.2(エムドットツー)とは、SSDの接続端子について定めた規格の名称です。mSATAという規格の後継で、パソコンの基板(マザーボード)上にあるスロットに直接取り付けて使用します。
幅22mm、長さ80mmの「Type2280」や、幅22mmで長さ60mmの「Type2260」、幅22mmで長さ42mmの「Type2242」など、サイズには複数の種類があります。また、端子形状もM-KeyやB-Key、B&M-Keyなどの種類があり、それぞれ端子の切り欠きの位置が異なるため注意が必要です。サイズが小さいことから小型デバイスのストレージに適しており、近年はM.2 SSDを採用するノートパソコンやゲーム機が主流となりつつあります。
「M.2を採用したSSDのデータ処理速度は高速」といわれることもありますが、一概にそうとは限りません。SATA接続を採用したM.2 SSDだと、従来の2.5インチSSDなどと同様に、実行転送速度は最大600MB/sほどになってしまいます。高速なSSDを使いたい方は「NVMeを採用したM.2 SSD」を選びましょう。
U.2
U.2(ユードットツー)は、2.5インチSSD向けに作られた接続端子の規格のひとつです。NVMeの接続規格であるPCIe以外に、SATAやSASといったインターフェイスにも対応していて、機器を稼働させた状態のままケーブルを抜き差しするホットスワップも行うことができます。
ただし、2.5インチとM.2に比べてサイズが大きいため、用途はサーバーなどに限られます。一般的な用途のパソコンで見かけることは、ほぼないといえるでしょう。
NVMeとSATAの違い
前述のとおり、一部のM.2 SSDはSATAを採用しています。SATAは「Serial ATA(シリアルATA)」の略で、HDDや光学ドライブなどを接続するための「接続規格」のことです。
NVMe採用のSSDは、SATA接続のSSDよりも性能に優れている反面、発熱量や消費電力も増加する傾向にあります。SATAはNVMeよりも性能面で劣りますが、消費電力や発熱量は小さく、価格もNVMeより安いです。
また、SATAはNVMeとは異なる通信規格で動作するため、互換性がありません。SATA接続の2.5インチSSDをNVMe採用のM.2 SSDに換装(交換)するといったことはできないため注意しましょう。
PCIe接続でNVMeのM.2 SSDが最も高速
2.5インチSSDやM.2 SSDなど、SSDにはさまざまな種類がありますが、PCIe接続で通信プロトコルにNVMeを採用しているM.2 SSDが、最もデータ転送速度に優れています。データ転送速度を重視したい方は、NVMe(PCIe)採用のM.2 SSDを選ぶと良いでしょう。
具体的なデータ転送速度は、規格の世代(Gen)などによって異なりますが、製品によっては最大7000MB/sもの速度を出すことも可能です。従来のSATA接続を採用したSSDの転送速度は600MB/s程度なので、理論上は10倍以上の速度を出せる可能性もあります。
PCIe(NVMe)接続のM.2 SSDは発熱に注意
PCIe(NVMe)接続のM.2 SSDは、SATA接続の2.5インチSSDに比べてコンパクトな形状で、高速なデータ転送を行えるのが魅力です。しかし、高性能な分消費電力や発熱量は大きくなってしまいます。
SSDの温度が高くなりすぎると、読み書き速度を落として熱暴走を回避する「サーマルスロットリング」と呼ばれる機能により、性能が低下する場合があります。PCIe(NVMe)接続のM.2 SSDの性能をより引き出したい場合は、ヒートシンクなどを活用した熱対策を行うことが重要です。
また、PCIe(NVMe)接続のM.2 SSDは比較的新しい規格なので、古いパソコンだと使用できない可能性があります。パソコンの内蔵ストレージの換装を考えている方は、通信速度や対応規格に加えて、マザーボードにM.2 SSD用のコネクターがあるかどうかも確認しておくと安心です。
データの記憶方式はSSDの速度に関係ある?
SSDの商品詳細欄で「SLC」や「MLC」といった単語を見たことがある方もいらっしゃるでしょう。SLCやMLCは、セル(データを保存する場所)1つにつき格納できるデータの容量を表すものです。
SLCは、セル1つあたり1bitの情報しか保存できませんが、データの処理速度や耐久性に優れています。MLCやTLC、QLCは、1つのセルにより多くの情報を保存できる一方で、SLCよりも耐久性やデータ処理速度に劣るというデメリットがあります。
一般的には、その他の条件が同じ場合は、SLCが最も速度が速く、1セルに記録する情報量が多いMLCやTLCの方が低速になるとされています。SSDの耐久性や信頼性にも関係する部分なので、購入時に確認すると良いでしょう。SLCやMLCについての詳細は、以下の記事も併せてご確認ください。
NVMe対応のおすすめM.2 SSD
NVMe(PCIe)を採用したM.2 SSDを使えば、データ処理にかかる時間を短縮することができます。ここからは、NVMeを採用しており、超高速なデータ処理が行えるM.2 SSDをご紹介します。
PS5対応 ヒートシンク付きM.2 内蔵 SSD 2TB
NVMe Gen 4x4 M.2 SSD・ヒートシンク・放熱シートがセットになった、PS5の増設ストレージとしても使用できる商品です。読み込み速度は約6,100MB/sと超高速で、快適にゲームを楽しめます。ドライバーが付属しているので、スムーズにPS5の増設を行うことが可能です。パソコンに取り付ける際は、ヒートシンクを外すことなく取り付けできるスペースがあることを事前にご確認ください。
USB 4 M.2 NVMe ポータブル 外付け SSD ケース
最大40Gbpsを実現するUSB4(Gen3×2)搭載SSDケースです。Macの起動ディスクとしても使える最大3,800MB/sの超高速データ転送に対応。USB4,Thunderbolt4/3ポートに接続することで内蔵SSDと同じNVMe M.2 SSDとして認識するため、MacやiPadProで高速転送が可能、高いパフォーマンスで容量を拡張できます。